この科目は、コンピュテーショナル・デザインの初心者向けにその設計手法の三つの要素(技術、理論、実践)の基本を導入することを目指し、情報処理の科目枠内でありながら、設計演習科目として実施される。 到達目標は、設計上の問題を最適に解決する手法を習得することで、アルゴリズミック(算法的)またはジェネレーティブ(生成的)な設計手法を用い、学際的な知識を基礎とする設計ロジックを建築デザインとして仕上げる過程を学ぶ。建築情報処理Ⅰでは、アルゴリズミックモデリングの基礎をソフトウェアの学習とともに修得し、生体模倣に関する前例研究や、自然及び社会的現象を紐解くシステムの数理モデルを応用することで、最適な解決策としてのフォルム、空間構成、及び建築的性能を開発し、それらをデザインプロトタイプ(簡易設計)として仕上げることを設計演習の目標とする。
構成は技術、応用・理論、実践の3段階(フェーズ)に分かれる。
今期(2024年前期)は初学者向けに、技術とその応用に焦点をあて、理論と実践は比較的簡単に済ませる。以下フェーズ1-3を段階的に実施する。
フェーズ1 技術 | 実技基礎 Rhinoceros と Grasshopperアルゴリズミックモデリング演習
-実技課題 |
フェーズ2 理論と応用 | 「システムとパターン」
-理論課題、応用課題 |
フェーズ3 表現と実践 | 「デザインプロトタイピング」
-簡易設計課題、作品課題(作品集/プロトタイプの仕様書作成) |
フェーズ1技術(1-5回 ハイブリッド)
「基本実技:アルゴリズミックモデリング」
- 実技講習、オンデマンド授業、課題を通して行う。
- 基本コマンド・コンポネントの学習と実存する建築作品のモデリングを通して技術の習熟度をあげる。
- デジタル模型による意匠表現の技術を会得するだけでなく、アルゴリズミックモデリング手法の核心であるフォルムの幾何学的ロジックやデザイン過程の観点から模型作成にアプローチする方法を理解する。
- コンピュテーショナル・デザインの理解、基本用語の確認
- 実技課題は授業毎に紹介する技術を使った応用的なモデリング演習とする。
フェーズ2 理論と技術応用(6-8回 ハイブリッド)
「システムとパターン」
- 講義、応用実技講習、課題と個人指導を通して行う。
- GHの応用:アルゴリズムを通して基本的なシステムのメカニズムをデザインへ応用する過程の初歩を学ぶ。
- 今期のシステムは一番基礎的で応用の幅のひろいフィールドとボロノイ
- 理論の導入:多様なシステムの仕組みやフォーマルパターンの関係性、学際色の強いバイオミメティック建築のサステイナブルで多面的な意義などを学ぶ。※時間の都合で大幅に省略の可能性あり
- 応用課題、理論課題の今期のトピックは「フォルムと空間構成」
- 応用課題はトピックに対し、学んだシステムのいずれかを使用し、応用パターンをつくる。
- 理論課題はトピックに対し、前例研究(既存の建築、システム、アルゴリズムやバイオミメティック建築)を実施、設計におけるインスピレーションをまとめる。
- 理論課題、応用課題、実技課題をまとめて第一講評会(中間発表)をおこなう。
フェーズ3表現と実践 簡易設計 (9-14回 対面)
- 課題の指導を通して行う。
- 課題は2つ、設計課題(デザインプロトタイピング課題)と作品課題(仕様書作成課題)。
- 設計課題(デザインプロトタイピング課題)は、応用課題と理論課題を融合・発展させ、コンピュテーショナル・デザインの根底にある問題解決プロセスに進む。フェーズ2の前例研究によるインスピレーションまたは講師によって用意された問題と仮説いずれかを選び発展させる方向を決定する。
- 発展の方向性が決まったものから、3D模型で素早くスタディを繰り返し行う、いわゆる試作づくりを学ぶ。デザインの効率を上げるため、並列プロトタイピングの手法に沿う。ペアを組んでも良い。解決策を並列的に複数回に渡って作成及び分析をすることにより、素早く最適策を練る。
- 最終フォルムは第12回までに3Dプリントは第13回の授業前までに完成させる
- 作品課題(仕様書作成課題)は、デザインプロトタイプの仕様書を作成することと、その他課題の表現を向上させ一つにまとめる。設計書の作成・ダイアグラミング・パース制作(レンダリングによる)・図面出力などの方法を個人指導を通して学ぶ。
- 設計課題は最終発表で講評をおこなう。作品課題はメールで提出する。
授業予定
※以下に掲載のないものはシラバスを参照
24.04.08 Week124.04.15 Week224.04.22 Week324.04.29 Week4評価の方法
評価の基準
主体的に学習に取り組む態度、チャレンジ精神と日頃の着実な努力を重視するが、課題の評価基準は以下を参考にする。
1.技術 2.デザインロジック(アイデアの独創性・理論の応用力・一貫性) 3.表現力(レンダリング、3Dプリントや作品集) から総合的に評価する。2回に渡る講評会の出席と全ての課題を提出することが単位認定の必須条件であり、Grade D 以上の者を合格とする。
評価にかかわる課題のリスト
Notion上の実技演習課題、応用課題、理論課題、簡易設計課題、2回にわたる講評会の発表
- 次の課題はNotionで提出する。
- 実技演習課題(1~5;フェーズ1)
- 応用課題 (フェーズ2)
- 理論課題(フェーズ2)
- プロトタイピング課題(フェーズ3)
- 実技演習課題と応用課題の課題をまとめたPDFを中間発表で各自発表し、同時にメールで提出する。
- フェーズ3の設計課題のPPTを期末発表で各自発表し、最終課題(作品課題)をメールで提出する。
※実技課題1-2(ライノ)の小発表はGW明けに行う
評価の時期と具体的な方法
- 評価は達成率と内容完成度に分けてする。
- 上記1:達成率の確認を主旨とする。第一回目の課題を除いて、授業前日まで(日曜日の20時59分)までを前週の課題の提出期限とし、達成率に関する評価はその時点で決定する。ただし、Notion上での成果は随時改善を試み、ページ更新を自由にして問題ない。
- 上記2:達成率と内容完成度(質)の評価を主旨とする。2は1の反復練習による成果をまとめとして8週目に提出・発表する。Notion上の更新は自由と上述したが、練習の積み重ねを考慮し追加点とする故である。
- 上記3:達成率と内容完成度(質)の評価を主旨とする。最終授業で提出・発表する。
前提条件
- 英語でのツールの使用、研究や読み物に抵抗がないこと
- パソコンのOSはWindowsの使用、授業はRhinocerosのMac版の対応 は基本していないので注意 Rhinocerosのバージョンは7.0を使用する
- RhinocerosとGrasshopperの習熟度に関する受講条件はない。しかし、本科目はあくまで設計演習科なので、技術演習に割ける時間は限られている。よってソフトウェアの基本使用法(Rhinocerosのインターフェイスやコマンドの使い方)についてはオンデマンド中心で自主学習してもらい、授業では設計に使えるテクニックや既存建築のモデルリング作業に焦点を置く。自主学習は授業と同時並行でも可能だが、量が多いので、1回目の授業の前にRhinocerosの基本使用の導入(※1以下参照)だけも事前に済ませたうえで授業に臨むことを強く推薦する。以上を事前に済ませることのできない学生は本科目の前半の実技演習(第4回目まで)の期間を使って、積極的かつ自主的にツールの習熟度を上げるよう尽力してほしい。
※1オンデマンド1:Rhinoceros入門編(3コマ分)
※2オンデマンド2:Rhinoceros曲面のモデリング(2コマ分)
※3オンデマンド3:Grasshopper入門編(2コマ分)