2025
透過 Layered Translucency | Spatial Depth through Translucent Overlays
Matsuri Abe 安部まつり
As part of the studio, each student team selected one of the given assignments as the basis for their design prototyping. See this page for the full design studio description.
Selected Assignment: Assignment B — Social Creative Hub (社会クリエイティブハブ) Each team of students selected one of given assignments to start their design prototyping. See this page for the entire description of the design studio.
背景ー問題ーコンセプトー目標
「重なり」という質の日本独自の感性ー関係性の分断ー透過性による間(あわい)ー空間における関係性の構築
日本の文化には、異なるものがゆるやかに交わりながら共に存在する「重なり」の感覚がある。自然と人、内と外、光と影、時間や記憶などが明確に分けられるのではなく、あいまいな「間(ま)」の中で重なり合いながら、ひとつの風景や暮らしが形づくられてきた。
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』では、「われわれ東洋人は、光を反射させるよりも、光を吸収することによって美を発見した」と述べられている。そこでは、光と影が対立するものとして捉えられるのではなく、そのあわいに生まれるゆらぎの中に美が見いだされている。また『万葉集』においても、人と自然、時間や感情がゆるやかに重なり合うように詠まれており、異なるものが共存することを肯定する日本独自の感性が表れている。
しかし現代の都市や建築は、効率や機能を優先するあまり、空間や人の関係を明確に分けてしまう傾向が強くなっている。その結果、日本文化に本来あった「重なり」の感覚は失われ、都市や空間の関係性は分断されつつある。例えば、銀座と築地、車道と歩行空間、過去と未来といった関係も、本来は連続しているはずのものが切り離されてしまっていると言える。
そこで本計画では、日本文化に根付いていた「重なり」の感覚を手がかりに、分断されてしまった都市や空間、人の関係を再びゆるやかに結び直す建築を提案する。
本計画のコンセプトは、日本文化に見られる「重なり」の感覚を現代の建築空間として再解釈することである。日本の空間には、自然と人、内と外、光と影といった異なる要素が明確に分けられるのではなく、ゆるやかに交わりながら共存するという特徴がある。本計画では、こうした関係性を建築空間の中に取り込み、異なる要素が重なり合うことで新たな関係や体験が生まれる空間を目指す。
デザインスキームの解説
スキームの要点:透過性をコンセプトに、「重なり」による空間の関係性(間)を線(柱)の乱立によって再構築する
Illustration of Design Scheme::点やフィールド、流れの関係からデザインスキームを導き出すプロセスを示している。 局所的に生まれたノード(点)が互いに関係しながら空間を形成し、空間同士が重なり合う。繭(=リラックス空間)を形成するポケットを繋ぐようにブリッジを作り、その周りにその他の用途空間が生まれる。
Exploded Axonometric of Tectonic System:本プロジェクトの構造システムは、枠・柱・壁・スラブの4つの要素によって構成される。これらの要素が重なり合いながら、空間の境界や構造的ネットワーク、ポケット空間を生み出し、多様な空間体験を形成する。
Zoning and Programs Brief Introduction:デザインスキームをもとに、3つの空間プロトタイプを設定している。タイプAは密度の高い空間、タイプBは柱によって分節される空間、タイプCは人が滞在する中心的なポケット空間として機能する。
Types of Programmatic Protypes based on the Scheme:敷地はギャラリー、スタジオ、ラウンジ、エントランスなどの複数のプログラムに分けて配置されている。 これらの機能はネットワーク構造に沿って配置され、動線や交流、創作活動を促す空間構成を形成している。
プロトタイプ
要点
本プロトタイプは、透過性をコンセプトに、重なりによる空間の関係性を線(柱)の乱立によって再構築するというデザインスキームに対応する。
パラメーターからパフォーマンス
点駆動で生成した線分をもとに柱群を立ち上げ、柱の密度や重なり具合が、空間の「透過性」をコントロールし、「関係性」をデザインし、ゆるやかな境界を定義する。
技術的要点
点群から生成されたネットワーク構造によって空間は定義され、複雑に絡み合うラインによって多様な空隙が生まれ、内部と外部の境界が曖昧な、連続した空間が展開される。 入力ポイントは場のシステムとShiftlistによって制御し、プロキシミティによる接続関係を定義し、線同士が有機的に結びつく構造が形成される。生成されたラインはパイプ化され、空間を包み込む立体的な空間構造へと展開する。
ボリュームスタディ
概念・空間・制約の相互関係を検証し、建築として成立する可能性を見極めるための判断としてボリュームスタディーを行った。 1.概念との一致(間の質)2.多様性の豊富度・動線と機能3.(実務的な)機能面積における制限の3つの観点から判断し、 1・2の概念との一致を保ちながら空間の豊かさと動線の自由度を両立させる結論を取った。
システムの試行錯誤
4つのシステムの試行錯誤を行い、それぞれのアルゴリズムが生み出す構造や空間の特性を比較検討した。その中から、点群の関係性をネットワークとして可視化し、空間の連続性と多様な空隙を生み出すField+Shiftlistの手法を最終的なプロトタイプとして採用した。
ゾーニングとプログラム
敷地調査によりゾーニングを決定した。断面操作によると、上下で機能を変化させ、1・2階に交流要素を設ける。低層部を〈ソーシャルベース〉として計画し、創作活動と都市生活が交差する交流の場を形成する。平面操作によると、棟によって機能を変え、用途別分棟構成とすることで、活動特性の異なる機能を明確に整理する。通りの多いギャラリー・ホール棟を〈ソフトな公共面〉、静かな背面のコワーキング棟を〈ハードな集中面〉とした。