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「ゆるい境界」を持つコミュニティ・ハブ ーWoollyPaths が導く交流空間の提案ー

「ゆるい境界」を持つコミュニティ・ハブ ーWoollyPaths が導く交流空間の提案ー

Phase
Design
Year

2025

System (Generative Logic)
Goal

Background
KGI25FA Kogakuin University Fall 2025
Team
Students
Students

Ryo Ogawa 小川凌

Typology
💡

Design team: Ryo Ogawa 小川凌 This project was presented on December 16, 2025, in Kogakuin University’s Information Technology course Computational Design by Ryo Ogawa, and was later developed into her undergraduate graduation thesis.

As part of the studio, each student team selected one of the given assignments as the basis for their design prototyping. See this page for the full design studio description.

Selected Assignment: Assignment D — Undergraduate Graduation Project

背景ー問題ーコンセプトー目標

私がこれまで建築と関わる中で、ある違和感を抱くようになった。それは、私たちを取り巻く建築環境に「閉鎖的で堅い印象」を受ける場面が多いということである。 地元の市民図書館や市民会館、さらには都心に立ち並ぶ高層ビルなど、用途や規模の異なる建築に接する中で建物の外観や内部空間の構成や人の振る舞い方にどこか共通した感覚を覚えることがあった。このような印象は私の主観的な感情であるが、どのような場所でも多くの人が感じる印象ではあるはずだ。

01-2 違和感を感じる建築の対象 こうした違和感は、特定の建築用途に限らず、私たちを取り巻く建築環境の中で、 私が感じたものである。しかし、建築はその機能や利用者によって求められる振る 舞いが大きく異なるはずだ。そこで、建築の機能と主な利用者、重要視されること から感じる建築の在り方を整理することで、私の違和感が特にどのような建築にお いて強く感じるのか明確に示す。

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私の視点に基づく整理から、建築の機能や利用者の視点から見ると閉鎖的/堅 い印象が建築において必ずしもネガティブな印象では無い事に気が付いた。そ の中で不特定多数に利用され、本来は地域に開かれているはずの市民館などの 公共建築が持つ閉鎖的で堅い印象に強く違和感を覚えた。そのため、本設計で は公共建築を対象として現状の閉鎖的で堅い印象を改善していく。

閉鎖的で堅い印象の建築があることで、建物と周囲環境の関係はほとんど感じることは無く、同時に建物内部でも利用者同士の関係性は構築されることは無い

建築的課題

全ての人を対象としたパブリックな場である公共建築が人と人の関係性・建物と周囲環境の関係性の希薄化を助長するものになっているように感じる。

提案

本設計では、分析・調査によって明らかになった建築の空間構成および敷地に対する建物の在り方に関する二つの課題を出発点とする。 一つ目は、動線の単調さや機能分離が明確であることによって、建築内で行われる活動の場所や振る舞いが限定されてしまっている点である。 二つ目は、建物が敷地内部にのみ向けられた存在として配置されることで、建物を利用する人のみが通過する構成となり、周囲環境から内部で行われている活動が不透明になってい る点である。 本設計は、これらの課題を解消するため、建築内部においては特定の用途や行動に収束しない多様な活動が同時に成立する空間構成を目指すとともに、建築と周囲環境との関係を再 構築することで、周辺を利用する人々も巻き込みながら建築が使われていく状態をつくり出すことを方針とする。

本設計の提案

「ゆるい境界」の存在によって、人と人・建物と周囲環境の関係を構築する建築

手法

03-1 設計手法の選定 分析と調査の結果から決めた本設計の提案は、建物の構成に着目したものである。そのため建物の部分的に手法を取り入れるのではなく、建物の立ち上がりの基盤となるような手法を探し、取り入れることが重要である。 人と人の関わりや建物と周囲環境の関わりを隔てている要素である堅い境界という要素をゆるい境界へと転化させるためのキーワードとして私は連続性を挙げる。例としては、連続性のある動線や階層間の連続性、建物と周囲環境の間に連続性を生ませるということである。 これらの考えを達成するための手法を探した中で、私はWoollyPathsという考えを本設計を行う上で扱うこととした。

03-2 WoollyPathsとは WoollyPaths とはどのような概念なのかを明記していく。 この考え方の背景には、ドイツの建築家・構造家であるフライ・オットー(Frei Paul Otto)氏が行った「濡れ糸の実験(Wet thread model)」が深く関係している。 まず、その彼が行った「濡れ糸の実験(Wet thread model)」について簡単に概要の説明を行う。

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この実験は、自然の力によって、総距離を短くしながら各点を結ぶ「最小経路網」が自己組織的に生成されることを示している。 導き出される形状は、余分な経路を削ぎ落とした合理的なものとなるため、効率的な迂回ルートのデザインや、都市計画における最適経路の探索モデルとして参照されている。 本設計では、この自然発生的な経路生成の仕組みを「WoollyPaths」と定義し、そのアルゴリズムを応用する。

03-3 GrasshopperにおけるWoollyPathsの実装 03-2で定義したようにWoollyPathsは、自然発生的な経路生成の仕組みである。そのため、建築物の設計に応用するには、結果のみを参照するのではなく、生成過程を操作しながら理解を深めることが重要である。 本設計では、WoollyPathsを建築物の設計に応用するための検証を行う手段としてGrasshopperを用いた。 Grasshopperは、自分で操作しながら即座に形態や経路として可視化できるため、WoollyPathsのアルゴリズム的特性を設計へと応用するためのツールとして適している。これにより、WoollyPathsの理解と設計へ応用するための検証を往復しながら、WoollyPathsを設計手法として位置づけることを可能にする。

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上記の図は実際にgrasshopperを用いてWoollyPathsの考えを実装した結果である。 今回の実装は、もとの「濡れ糸の実験(Wet Thread Model)」を参考にして、Grasshopperを用いて行った。しかし、GrasshopperでWoollyPathsの考えを実装していく中で、パラメータの定義や、加える力の大きさなどを変更していくと違った実装結果が生まれる事が分かった。 そこで、パラメータの大きさや点の配置などを変更するなどの操作を行い、実験を行うことで、WoollyPathsの考えを本設計の手法として取り入れるための糸口を見つける。

03-4 実験の結果と設計手法への導入

今回の実験では、パラメータの変更などを行い、力の加え方の一例や、設計においての適切なWoollyPathsの実装を行うため行った。そして結果からWoollyPaths の考えを建築の設計手法として導入するするための糸口を見つけることが出来た。 WoollyPathsの考えで生成される動線経路は単なる迂回路ではなく、動線と付随する空間という構成が形成されている 事が分かった。また、束ねられた動線は場所によって多くの通過が起きそうな場所や、路地のような補助動線のような場所など、性質が異なっていることにも気が付いた。つまり、WoollyPathsの考えは、生成された動線の質によって付随する機能が決めることが出来るという特性があることが分かった。 さらに生まれた空間は吹き抜けとして、作用したり、動線から延長した滞留空間になるなど、幾つかの活用方法があることが分かった。さらに、内部空間の構成への手法のみならず、周辺環境を利用する人が建物を利用しやすくなるための敷地への建物の建ち方についても応用の可能性も見つけることが出来た。

03-5 WoollyPathsを用いた設計手法

実験の結果などから見つけたWoollyPathsの特性を基に実際の設計手法としてどのように、利用していくのかを明記していく。 設計を行う対象敷地に対して、敷地の調査などを行い、周囲環境と対象敷地の関係性を分析を行う。敷地に対して、周囲環境の利用者の動線も考慮したWoolllyPathsのアルゴリズムを用いることで、敷地に対しての建物の配置が決める。(図3のようなイメージ) 内部空間の構成に関しては、階層ごとにWoollyPathsのアルゴリズムを使用をする。階層ごとにWoollyPathsのアルゴリズムを使用することによって階層間で内部空間の構成にずれが生じ、階層間の繋がりを生みやすくする。そして、WoollyPathsのアルゴリズムによって生成された動線の質から、同じく生成された空間に入れる機能を決定していく。 このようなWoollyPathsを用いた設計手法を取り入れることで、「堅い境界」を生み出している内部空間の構成や周囲環境に対しての建物の建ち方とは異なった空間構成と周囲環境への建ち方が人と人・建物と周囲環境の間の関係性を構築する「ゆるい境界」を創出する