Shuma Inoue (井上秀馬), Ryota Odagiri (小田切良太)
私たちは火星調査団である。私たちは名前の通り「火星」を調査しているのだが、これは私たち人類が将来地球を脱し、火星で暮らすために調査している。現在、我々人間は当たり前のように地球で暮らしているが、その当たり前は未来永劫続くものではないだろう。なぜなら地球は現在様々な問題に脅かされ続けており、今の状況が永遠に続いていくとは到底思えないからだ(例えば地球温暖化、食料不足、エネルギー問題など)。そう考えた人類は昔から地球以外の惑星で人間が暮らしていけるかどうかについて調査してきた。そこで今回、私たちは様々な惑星の中でも地球に比較的近く、人間の移住先としては有力な「火星」という極限の環境における建築を思案することにした。
人間が快適に暮らすための「エネルギーを火星においていかに効率良く生み出し、いかに火星に“適応”できるか」ということを目標に建築を創ることにした。 その解決策として「環境に適応しながら成長する建築」というものを提案する。 ロマネスコなどに代表される自己相似性をもつフラクタルやレタスから抽出した「単位面積内の表面積を増やし方」(ミニマルサーフェス)を設計の焦点とし、どんな形であれば表面積が増え、エネルギーを効率よく集めることができるのかを考える。 そしてそれを一つのコンポーネントとし、「同じ形が無限に続いていく」ことを利用し、無限に広がらせる。
一つのコンポーネントとしてエネルギー効率の良い形を考える際に“Gyroid”を考えた。 ジャイロイドは表面積を大きくする形という点で有用であり、その構造は軽量化になることに加え、構造的にも強いという特徴がある。 アイデアはコンポーネントの増え方にも日照条件と照らし合わせたルールをつけることでより建築の“成長”ということに火星との適応という意味をよりつけれるのではないか。
私たちは今回、あくまで建築のプロトタイプとして効率的にエネルギーを集められるような形をどう作り、どう増やすのかを考えた。その結果人が住めそうな“空間”や“場所”が生まれていたことに気づいたのだ。つまり、この研究によってエネルギー効率を追い求めた建築で人間の暮らし得る可能性を見出すことができたと言える。つまり機能は今後の研究を続けることで決まっていくはずである。
これは火星の夜における本建築の俯瞰パースである。今回のプロトタイプで解決したい“エネルギー供給”という部分を一番良く表しているシーンで、昼に太陽から集めた太陽エネルギーを夜に有効活用している。
これは火星以外でこのプロトタイプ建築を建てた時の写真。地球の平地でも実験してみた時の内観パース。元はエネルギー効率を高めるためだけの形であったが、徐々に人の生活や営みが見えてくる。この形、そしてこの増え方は火星に適応しながら人々の活動を生むことができるだろう。
これは本プロトタイプ建築を私たち地球調査団が実際に火星で建てた時のパースである。赤色の惑星「火星」にまるで浮かぶ生命体のような印象を与える。火星での建築は一体どんなものになるのだろうか。きっとこのプロトタイプ建築のように今までの建築の形を超えた不思議で、どこか惹きつけられて、機能的にも理にかなったものであろう。もしかしたらこの生命体のような形であるからこそ、将来人間だけではなく宇宙人ですら住めるような場所が生まれるのかもしれない。