プロトタイプの背景と解決策のシナリオ
地球温暖化の進行により、多くの地域で海面上昇が起こりうると考えられる。海面に浮遊することで、海面上昇による水害を受けることのない都市を作ることを試みた。浮遊都市を考える上で、インフラ、浮力、環境との関わりの問題が浮かび上がり、サルガッサムの特徴を利用して解決に取り組んだ。
水面に浮遊して海を漂う海藻のサルガッサムの生体・構造を模擬することで、水に浮く構造体を作った。サルガッサムは波によって岩から引き離され、実に含まれる空気によって浮き、海面に浮遊する。 このサルガッサムの特徴を利用し、枝をインフラ、実を住居、葉を広場とした浮遊都市を考えた。
プロトタイプのシステムやアルゴリズム的機能
ブランチ(分岐)システムを用いてサルガッサムの構造を表現する。 構造体の中心をコアとして四方に枝分かれを増やし、コアから末端にインフラが届くように配置する。 構造の軸となるインフラは、Grasshopperのフラクタルツリーの植物の枝分かれの法則を利用し、サルガッサムの茎の枝分かれを表現した。インフラが、中心に配置されたコアから、枝分かれによって末端まで届くように配置し、これにより住居である実にインフラが届くように設計されている。この複雑な構造は、サルガッサムの絡まり合う特徴にも対応しており、都市が結びついたり、離れたりするという変化が起こる。
プロトタイプのスペック
水上都市を浮かせるためのシステムは、浮き袋の役割を果たす、サルガッサムの実を模倣したものである。また、この空間を生活空間とすることで、水中での生活も可能になる。実物のサルガッサムとは異なり、重量の重いものを浮かせるため、浮きと生活空間のバランスを調整し、水面に近い部分に浮きを多く配置した。 水上都市と環境との関わりは、サルガッサムが多くの生物の住処になっていることに対応し、水上都市も、その複雑な構造から多くの生物の居場所となると考えた。地上の都市が、水害や海面上昇によって水質汚染をしてしまうのに対し、水上都市は生物の居場所となることで、環境保護にも寄与することができる。 また、サルガッサムが水面に浮くことで、効率よく光合成を行うのと同じように、水上都市も太陽光を浴び、太陽光発電などでエネルギーを産出する。
サルガッサムを模倣することで、様々な変化のある環境が作られる。 葉の模倣による水上広場は人々に水上の居場所を提供する。また、複数の水上都市が集まって大きな都市となり、都市同士の交流を生み出す。
テストサイト
ブルネイにある水上都市のカンポン・アイールに配置してみた。 カンポン・アイールは安全面・防災面・衛生面から政府が移住を推奨しているが、カルガッサムの水上都市を設置することで、水上の生活を続けねがら、安全に生活することができる。